「米中貿易摩擦」なんて言葉が2年前から飛び交うようになったけど・・たぶん、ほとんどの人がピンとこないだろうし、そもそも、それってどれほどのものなん? って人も多いかもしれない(笑)
なので、きょうは関税について、こちらの現場からちょこっと説明させて頂こうと思う。
現場というのは・・私は現在フォワーダー会社の通関部署で働いている。(アメリカの輸入通関をしてる)
日々入ってくる貨物を輸入通関して保税倉庫から出すのが私のメインのお仕事というわけだ。
(とはいうものの、コロナの影響で入ってくる貨物量は以前より減ってはいるけどね~)

私は輸出入の仕事はそれなりに長いのだけど・・実は輸入通関のお仕事は今までは外注だったんで、私自身はやったことがなかったのだ。 ところが、たまたま現在の会社に通関部署があり、縁あって私も去年からやることになってしまったというわけ。
アメリカではこうゆうお仕事をする人を、Entry Writerと呼ぶ。(日本ではなんというんだろ? 通関士?なのかなあ?)
これが、やってみるとこれがなかなか面白いのだ~♪
世界の動きやアメリカの動き(アメリカは今どこの国と仲良くしたいのか?とか、どんな製品を守ろうとしているのか?とか・・)そういた部分がしぜんと見えてしまう。
私のような、まだまだ新米のエントリーライターであってさえもだ(笑)
・・・・・・・・・・・・・・・・
さて、まずは・・
2018年7月、トランプ政権は340億ドル相当の中国製品に25%の追加関税を発動した。
というニュースが飛び交ったのを覚えておいでだろうか?
こちらのビジネス・インサイダーという記事に詳しく載っていたんで、とりあえずURLを張り付けておく。
↓
中国への関税発動、アメリカの真の狙いは「中国製造2025」計画の阻止だ
さらにこの後、トランプさんは「今後もすぐに中国からアメリカへの総輸出額ほとんどに相当する規模のものに追加関税をかける予定だ!」と強気発言をしたものだ。
うわっ! なんちゅうことすんねん?
トランプ、ついに気が狂ったんかい?
と議会は大騒ぎ。
つーか、こんなことをすれば中国政府が黙ってるわけがないからだ!
案の定、倍返し~!とばかりに、めちゃめちゃアメリカ製品に追加関税をかけまくったのだ(笑)
これを報復関税とよぶ(笑)
たとえば、中国では日本車や欧州車に課される関税は15%なのに、アメリカからの輸入関税はいっきに40%。
テスラなんて中国で製造されてない車はたまったもんじゃないだろう。

それだけでなく、アメリカからの農産物にまで追加関税をかけたものだから、トランプさんを支持してる州の大豆農家なども大打撃で悲鳴を上げたという。
トランプ、とんでもないことをしてくれたな!
いい加減にせんかい!
とアメリカ国内も、賛成派反対派とまっぷたつに割れて大変だったようだ。
いやあ・・・それでもトランプさん、それでも今やらなきゃならない!の姿勢は崩さない。
「肉を切らせて骨を断つ」の思いだったのかも。
-------------------------------
さて、関税がどのように影響するか?
国内への輸送だったら輸送費だけで送れるものなのに・・国が違うというだけで関税というものが掛けられ、さらに送れるもの送れないもの・・といった厳しい規制もある。 実はまだまだある・・アメリカにはBOND(国に払う保険のようなもの)とか、諸費用はいっぱいかかるのだ。
とくに関税というのは一番厄介なのだ。(おカネがかかる)
関税 = DUTY (国際空港内にあるデューティーフリーショップのデューティとも同じ意味)

基本関税は外国から入国してくるものすべてにかけられる。
ところが、ものによっては関税無し(まさにDuty Free)というのも少なくないのだ。
たとえば、個人使用のお引越し荷物だったり、商業目的でも申告金額がUSD$2500以下なら、モノにもよるけど手数料程度で関税はゼロになることが多いのだ。 手数料だってゼロって場合もある。
ここまでが基本。
さて、ここからなんだけど・・・
まず一番肝心なのは、それがどこで作られたものか? たとえばMade in Japan か Made in Chinaかだけの違いで・・・まったく同じ商品でまったく同じ金額だったとしても、お支払い金額はぜ~んぜん違ってしまう。
実際に私が通関したものの中で、わかりやすい例をあげてみる(これは金額がもっとも小さいヤツ)
商品は「電気系のスイッチ」で、一方は中国工場で作られたもの。 もう一方は日本の工場で作られたもの。
●こちらは日本製(Made In Japan)

注:実際使っているシステムのオンライン画面をスクショしたもの。自分で計算するわけではなく現在はシステムにデータを入れて自動計算させるように出来てるのだ。
Enter Valueというのは申告金額のことで、これは$196.50(たったこれっぽっちのものならFedexでも使えって言いたいとこだけどね・・)
最後のラインのTotal Duty Taxのところをみると、ゼロになってるよね?
つまり・・・関税もゼロ、手数料もゼロで、なーんも支払う必要なしってことだ。
●次に中国製(Made In China)

え? まったく同じ商品でまったく同じ申告金額の$196.50だったのに~。
まず、Duty(関税)が$49.25もかかり、しかも手数料が$26.79もかかり、合計で$76.04を支払わなければならないということだ。
おい! 商品はたったの$196.50なんだぞ~、と、ここで怒ってもダメなのだ~(笑)
申告金額($196.50)に対して、Duty(関税)が$49.25・・まさしく25%ということだ。
その上、実質的には手数料だって払わなきゃならないわけだしね~。
たかが196ドルの商品に対して、76ドルも支払わなければならないか、まったく何も支払わなくていいか?
これがビジネスとして頻繁に輸出入を繰り返してた場合、いったいどれだけ違ってしまうことだろう。
こりゃ大変な差となるということがおわかり頂けると思う。
そして、どんだけ中国と日本に対する待遇が違うのか?
もう、一目瞭然だろう。
ところがまだあるのだ!
今年2020年からは、US-Japan Trade Agreement(日米貿易協定)というのがさらに適応されたため、ここのリスト上に上がってる項目については、さらに関税がめっちゃ安くなったりタダになってしまうものが増えたのだ。
ある日本の車の会社で、車の型を日本から輸入してアメリカで組み立ててるのだけれど、それが今まで1回の輸出申告額がだいたい6000万円(50万ドル以上)もあって、どんだけ関税を支払っていたかというと・・・ざっと1万5千ドル(ざっくり150万円くらい)を毎回支払っていたのだ。
ところが今年からは・・なんと関税無料になってしまい、手数料だけ1000ドル(10万円程度)でいいことになったのだ。
この社長さん、どんだけ喜んだことか(笑)・・・私にまで・・厚くお礼を言われてしまった(私、関係ないつーのに)
このように、日本に限らず優遇されてる国は、他にもいくつかあるのだ。
そうゆう国に対しては、関税Freeの優遇措置をとってるわけだし・・かと思えば、逆にもっと関税を上乗せしちゃう国だってあるのだ。
これは参考までに、
CBP(アメリカ税関)で発表されてる最新版の関税率のリストがあるんだけど、ほんの一部だけ紹介してみよう。

商品は バキュームポンプ、 これを右にみていくと、Generalというのが「通常」かかる関税のことで、通常だと2.5%の税率がかかるということだ。
ところが、その隣にはSpecialってのがあって、そこをみるとFree(無料)って書かれていてさらにカッコの中にアルファベットが書かれてる。
このアルファベットは国を表す記号なのだ・・たとえば、AUはオーストラリア、BHはバーレーンという具合に。 JPは日本。
JPもちゃーんとこのカッコ内に書かれてるね~。 つまり、日本からバキュームポンプをアメリカに輸入しても関税かからない! わーい!
ってことになるのだ。
ところがさらに右にいくと35%と書かれてるので・・場合によっては35%もかかる場合があるということらしい。
これが、いつ、どうゆう場合にこれが適用になるのか‥私は知らない。(なんせまだ新米なもんで)
ところが中国だけは特別なのだ!
中国は、General(通常)にも該当しないし、もちろん、Special(無料)にだって該当しないのだ。
私たちは商品のすべてを10桁の数字で管理してるんだけど(一般的にHSコード、アメリカでHTSコードと呼んでる)、ところがメイド・イン・チャイナに限っては、もう1つ別コードがあって、それを調べて入力しなければならなのだ。 それをチャイナコードって呼んでる。
で、どうなるかって?
通常の関税率よりもさらに高くなるようになってる(それが25%だったり、モノによってはもっとかかる場合だってある。)
最初に例として、日本製と中国製の画像をアップしたけど、あの中国製はチャイナコードも入力した結果なのだ。
チャイナ、どんだけ嫌われてるんよ~(笑)
めちゃめちゃ優遇されてる国があると思えば、どんだけ嫌われてるんよ~って国もある・・というわけだ。
そういえば・・日本では韓国をホワイト国から外したとかで、韓国さんから相当ブーイングが来てたよね?

あれも、おそらくSpecial扱いで今まで無料だったものが、General(通常かかるレート)に戻されちゃったんだろうな~。 (私は日本の通関についてはぜんぜん知らないけど、おそらく仕組みは同じだと思うのだ。)
そんなわけで関税のレートをみてるだけで、色々と見えてくるものがある、というわけなのだ。
通常でも2%程度の関税しかかけないものもあれば、30%や40%なんてものまである。
自国の守りたいものほど、高いレートの関税をかけるのだから、何を守ろうとしているのか?が見えてくる。
さらに、今どの国を優遇しどの国を敬遠してるのか・・・そういったことが見えてしまう。
それは、どこの国でも同じことだろう。
世界の時事とともにあるのが関税なのかも(笑)

去年の暮、ある日系企業の社長さんが、「もう中国からアメリカに送るのやめようと思うんだ~。関税が高すぎてたまったもんじゃないし、中国工場は閉鎖してマレーシア工場から送ろうと思うんだけど、どー思う?」と聞かれたことがあった。
「そりゃあ、その方がいいに決まってますよ~。 ましてマレーシアにすでに工場を持ってるだから。」
それに・・私だって仕事がラクになる(笑) 中国産の場合は二度手間になる上、やたらに証明書提示などが要求されることも多いので仕事に倍以上の時間がかかるのだ。(それは、お客様には言えない、ここだけの話だけど・・)
わーい!
私のクライアントさんから、ついにMade In Chinaがなくなるぞ~と喜んだものの・・・ところが、今年も半ばを過ぎたというのにいまだに中国産の貨物が同じようにやってきている。。。
そう簡単にはいかないのだ。
途中で契約を破棄すると中国では莫大な違約金もかかるし、なかなか退去させてもらえない、と聞いている。
日本政府からの中国移転のための補助金ではどうにも賄えないほどの損失が大きい・・とも聞いている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「中国依存で世界は回っている」・・これは以前からも仕事上から痛切に感じていたことだ。
まず、ほとんどといっていいくらいエアラインは中国系が多く使われているのだから。
中国系の飛行機が飛んでるところはどこでも真っ先に中国系を使うのだ。(私はアメリカ在住の日系フォワーダでしか働いたことがないのでひょっとしたら他は違うのかもしれないが・・)
中国系というのは、China Air, China Southern, China Eastern cargo などというエアラインの会社のことだ。

「シンガポールから来るのになんでシンガポール・エアを使わないんだよ!!」
「だって、チャイナ系の方が安いんだもん。 安い方使うに決まってんじゃん!」
現地国エアラインより何よりも、一番安いレートのチャイナエアこそが熱烈歓迎
されるというわけだ。
ところが! 貨物輸送上の問題が多々起こる。 その対応も悪い。 話してる途中で電話が切られることもしばしば。
中には英語すら満足に話せない人だっている・・・。 おいおい!
「こうゆう厄介ごとにかかる交渉や時間のロスなども考慮した上で、チャイナ系に決めたんかよ?
いーーや! 絶対考えてないだろ! ただ安いからだけで決めてるだろ!
その上、それにかかる面倒なことはぜーんぶ社員に押し付けて仕事なんだからなんとかしろ!だし、おまけに経費削減で残業は絶対するな!って、いったいなんなんだよ!! 」
と・・社員は不満たらたらになるというわけだ(笑)
まあ、思い起こせば・・ここ数年来、ずーーと多くの企業が中国進出をして中国工場を建てまくったきたのだから・・必然的に中国産を多く扱うことにもなるし、エアラインだって中国系となるのは当然だろう。
とにかく、中国系のエアラインは安いんだから!
(それはカーゴ便だけかな? それともパッセンジャー便のエアラインだって安いのかな?)
そうやって、なにもかもが中国中国、Made In Chinaだらけになったというわけだ(笑)
いやいや・・Made in Chinaじゃない製品ですら、実質的にはMade in China?と呼べそうなものだってある。(私たちが知らないだけ)
そんな内容を、少し前のブログ記事にアップしたことがあった ➡世界情勢でみる「この世は金次第」か「カネは二の次か」
イタリアの有名デザイナーズブランドについての話だ。
ミラノ周辺の有名なイタリアブランド、GUCCI(グッチ)、FENDI(フェンディ)、VALENTINO(ヴァレンティノ)、PRADA(プラダ)といったものは、Made In Italyでありながら、 実際には、北イタリアの中国人の工場で、中国人が管理し、中国本土から呼び寄せた中国人労働者によって作られてるという話。

これじゃあ、イタリアの香りはもうしないだろう。
気がついてみたら、こうやって世界中が「中国」一色になっていたというわけだ。
それがグローバル化だ。
別の言い方をすれば、国も国境も関係ない! 儲かるとこどこでもいき、なんでもしちゃう!というポリシーであり、 そうやって世界をまたにかけた人々のことだ。
私は日々「関税」を相手にしながら・・そんなことを思う。
「安ければ良し」だけが定着したおかげで、客側、船や飛行機会社、我々フォワーダー、みーんなどこかでイライラしてる。
「コストは1円でも安く儲けは1円でも高く」・・仕方ないさ、ビジネスってそうゆうものさ、と言い聞かせながら。
おーーい、誰かここらでストップかけてくれよ~!
でも回り出しちゃった歯車にストップをかけるのは大変だ。
そんなことをすれば摩擦によって火花が散る!

ああ、これが貿易摩擦なんだ~
・・・・・・・・・・・・・・・
ある人が「中国が戦争をしかけてきたらどうしよう?」と心配していた。
「こんなにも巨大な経済大国となり世界を牛耳ってしまった中国なんだから、いざ戦争となったらアメリカの連合軍だって危ないかもしれない・・・核保有国でもあるわけだし~。 世界大戦にでもなって、しかもアメリカが敗戦国になったら、どうしよう?」と。
いやいや、それはないだろう
もしも、実際に戦争をしかけてきたとしても、最終的には中国に勝ち目はない・・と思う。
なぜなら・・利権主義の国だから。
利権主義の人々が一番大切にするのは、我が身と我財産だ。
中共が怖くて強いと思ってるうちは従順なフリをするけど、危なくなれば、さっさと敵国に情報を売ってでも自分が助かろうとする人たちばかりになるだろう。
少しでも不安や恐怖を感じれば、それで自滅の道をたどるような気がする。
戦争って決して良いことではないけれど・・戦争に勝つには国の大きさや財力だけではないと思っている。
国民(兵士たち)の愛国心、たとえ命掛けでも国の役に立ちたいという思いがあってこそだ。
そうやって一丸となれる国であれば、たとえビンボーな小国であってさえ、恐るべき敵となることだってあるのだ。
(ひょっとして・・昔の日本はそんな国だったのかもしれないねえ。)
今の中国政府にそんなカリスマ的魅力はないと思う。
官僚も軍隊も、見てないとこでは物資の横流しが横行しているというような国では、軍の統率だってとれないだろう(笑)
国民に愛を与えない政府は国民から与えられるわけもない。
み~んな自分のことが一番で、み~んな自分のことしか考えない・・ということになる。
そして、いざとなれば一番弱い存在じゃないかな(笑)
なので、きょうは関税について、こちらの現場からちょこっと説明させて頂こうと思う。
現場というのは・・私は現在フォワーダー会社の通関部署で働いている。(アメリカの輸入通関をしてる)
日々入ってくる貨物を輸入通関して保税倉庫から出すのが私のメインのお仕事というわけだ。
(とはいうものの、コロナの影響で入ってくる貨物量は以前より減ってはいるけどね~)

私は輸出入の仕事はそれなりに長いのだけど・・実は輸入通関のお仕事は今までは外注だったんで、私自身はやったことがなかったのだ。 ところが、たまたま現在の会社に通関部署があり、縁あって私も去年からやることになってしまったというわけ。
アメリカではこうゆうお仕事をする人を、Entry Writerと呼ぶ。(日本ではなんというんだろ? 通関士?なのかなあ?)
これが、やってみるとこれがなかなか面白いのだ~♪
世界の動きやアメリカの動き(アメリカは今どこの国と仲良くしたいのか?とか、どんな製品を守ろうとしているのか?とか・・)そういた部分がしぜんと見えてしまう。
私のような、まだまだ新米のエントリーライターであってさえもだ(笑)
・・・・・・・・・・・・・・・・
さて、まずは・・
2018年7月、トランプ政権は340億ドル相当の中国製品に25%の追加関税を発動した。
というニュースが飛び交ったのを覚えておいでだろうか?
こちらのビジネス・インサイダーという記事に詳しく載っていたんで、とりあえずURLを張り付けておく。
↓
中国への関税発動、アメリカの真の狙いは「中国製造2025」計画の阻止だ
さらにこの後、トランプさんは「今後もすぐに中国からアメリカへの総輸出額ほとんどに相当する規模のものに追加関税をかける予定だ!」と強気発言をしたものだ。
うわっ! なんちゅうことすんねん?
トランプ、ついに気が狂ったんかい?
と議会は大騒ぎ。
つーか、こんなことをすれば中国政府が黙ってるわけがないからだ!
案の定、倍返し~!とばかりに、めちゃめちゃアメリカ製品に追加関税をかけまくったのだ(笑)
これを報復関税とよぶ(笑)
たとえば、中国では日本車や欧州車に課される関税は15%なのに、アメリカからの輸入関税はいっきに40%。
テスラなんて中国で製造されてない車はたまったもんじゃないだろう。

それだけでなく、アメリカからの農産物にまで追加関税をかけたものだから、トランプさんを支持してる州の大豆農家なども大打撃で悲鳴を上げたという。
トランプ、とんでもないことをしてくれたな!
いい加減にせんかい!
とアメリカ国内も、賛成派反対派とまっぷたつに割れて大変だったようだ。
いやあ・・・それでもトランプさん、それでも今やらなきゃならない!の姿勢は崩さない。
「肉を切らせて骨を断つ」の思いだったのかも。
-------------------------------
さて、関税がどのように影響するか?
国内への輸送だったら輸送費だけで送れるものなのに・・国が違うというだけで関税というものが掛けられ、さらに送れるもの送れないもの・・といった厳しい規制もある。 実はまだまだある・・アメリカにはBOND(国に払う保険のようなもの)とか、諸費用はいっぱいかかるのだ。
とくに関税というのは一番厄介なのだ。(おカネがかかる)
関税 = DUTY (国際空港内にあるデューティーフリーショップのデューティとも同じ意味)

基本関税は外国から入国してくるものすべてにかけられる。
ところが、ものによっては関税無し(まさにDuty Free)というのも少なくないのだ。
たとえば、個人使用のお引越し荷物だったり、商業目的でも申告金額がUSD$2500以下なら、モノにもよるけど手数料程度で関税はゼロになることが多いのだ。 手数料だってゼロって場合もある。
ここまでが基本。
さて、ここからなんだけど・・・
まず一番肝心なのは、それがどこで作られたものか? たとえばMade in Japan か Made in Chinaかだけの違いで・・・まったく同じ商品でまったく同じ金額だったとしても、お支払い金額はぜ~んぜん違ってしまう。
実際に私が通関したものの中で、わかりやすい例をあげてみる(これは金額がもっとも小さいヤツ)
商品は「電気系のスイッチ」で、一方は中国工場で作られたもの。 もう一方は日本の工場で作られたもの。
●こちらは日本製(Made In Japan)

注:実際使っているシステムのオンライン画面をスクショしたもの。自分で計算するわけではなく現在はシステムにデータを入れて自動計算させるように出来てるのだ。
Enter Valueというのは申告金額のことで、これは$196.50(たったこれっぽっちのものならFedexでも使えって言いたいとこだけどね・・)
最後のラインのTotal Duty Taxのところをみると、ゼロになってるよね?
つまり・・・関税もゼロ、手数料もゼロで、なーんも支払う必要なしってことだ。
●次に中国製(Made In China)

え? まったく同じ商品でまったく同じ申告金額の$196.50だったのに~。
まず、Duty(関税)が$49.25もかかり、しかも手数料が$26.79もかかり、合計で$76.04を支払わなければならないということだ。
おい! 商品はたったの$196.50なんだぞ~、と、ここで怒ってもダメなのだ~(笑)
申告金額($196.50)に対して、Duty(関税)が$49.25・・まさしく25%ということだ。
その上、実質的には手数料だって払わなきゃならないわけだしね~。
たかが196ドルの商品に対して、76ドルも支払わなければならないか、まったく何も支払わなくていいか?
これがビジネスとして頻繁に輸出入を繰り返してた場合、いったいどれだけ違ってしまうことだろう。
こりゃ大変な差となるということがおわかり頂けると思う。
そして、どんだけ中国と日本に対する待遇が違うのか?
もう、一目瞭然だろう。
ところがまだあるのだ!
今年2020年からは、US-Japan Trade Agreement(日米貿易協定)というのがさらに適応されたため、ここのリスト上に上がってる項目については、さらに関税がめっちゃ安くなったりタダになってしまうものが増えたのだ。
ある日本の車の会社で、車の型を日本から輸入してアメリカで組み立ててるのだけれど、それが今まで1回の輸出申告額がだいたい6000万円(50万ドル以上)もあって、どんだけ関税を支払っていたかというと・・・ざっと1万5千ドル(ざっくり150万円くらい)を毎回支払っていたのだ。
ところが今年からは・・なんと関税無料になってしまい、手数料だけ1000ドル(10万円程度)でいいことになったのだ。
この社長さん、どんだけ喜んだことか(笑)・・・私にまで・・厚くお礼を言われてしまった(私、関係ないつーのに)
このように、日本に限らず優遇されてる国は、他にもいくつかあるのだ。
そうゆう国に対しては、関税Freeの優遇措置をとってるわけだし・・かと思えば、逆にもっと関税を上乗せしちゃう国だってあるのだ。
これは参考までに、
CBP(アメリカ税関)で発表されてる最新版の関税率のリストがあるんだけど、ほんの一部だけ紹介してみよう。

商品は バキュームポンプ、 これを右にみていくと、Generalというのが「通常」かかる関税のことで、通常だと2.5%の税率がかかるということだ。
ところが、その隣にはSpecialってのがあって、そこをみるとFree(無料)って書かれていてさらにカッコの中にアルファベットが書かれてる。
このアルファベットは国を表す記号なのだ・・たとえば、AUはオーストラリア、BHはバーレーンという具合に。 JPは日本。
JPもちゃーんとこのカッコ内に書かれてるね~。 つまり、日本からバキュームポンプをアメリカに輸入しても関税かからない! わーい!

ところがさらに右にいくと35%と書かれてるので・・場合によっては35%もかかる場合があるということらしい。
これが、いつ、どうゆう場合にこれが適用になるのか‥私は知らない。(なんせまだ新米なもんで)
ところが中国だけは特別なのだ!
中国は、General(通常)にも該当しないし、もちろん、Special(無料)にだって該当しないのだ。
私たちは商品のすべてを10桁の数字で管理してるんだけど(一般的にHSコード、アメリカでHTSコードと呼んでる)、ところがメイド・イン・チャイナに限っては、もう1つ別コードがあって、それを調べて入力しなければならなのだ。 それをチャイナコードって呼んでる。
で、どうなるかって?
通常の関税率よりもさらに高くなるようになってる(それが25%だったり、モノによってはもっとかかる場合だってある。)
最初に例として、日本製と中国製の画像をアップしたけど、あの中国製はチャイナコードも入力した結果なのだ。
チャイナ、どんだけ嫌われてるんよ~(笑)
めちゃめちゃ優遇されてる国があると思えば、どんだけ嫌われてるんよ~って国もある・・というわけだ。
そういえば・・日本では韓国をホワイト国から外したとかで、韓国さんから相当ブーイングが来てたよね?

あれも、おそらくSpecial扱いで今まで無料だったものが、General(通常かかるレート)に戻されちゃったんだろうな~。 (私は日本の通関についてはぜんぜん知らないけど、おそらく仕組みは同じだと思うのだ。)
そんなわけで関税のレートをみてるだけで、色々と見えてくるものがある、というわけなのだ。
通常でも2%程度の関税しかかけないものもあれば、30%や40%なんてものまである。
自国の守りたいものほど、高いレートの関税をかけるのだから、何を守ろうとしているのか?が見えてくる。
さらに、今どの国を優遇しどの国を敬遠してるのか・・・そういったことが見えてしまう。
それは、どこの国でも同じことだろう。
世界の時事とともにあるのが関税なのかも(笑)

去年の暮、ある日系企業の社長さんが、「もう中国からアメリカに送るのやめようと思うんだ~。関税が高すぎてたまったもんじゃないし、中国工場は閉鎖してマレーシア工場から送ろうと思うんだけど、どー思う?」と聞かれたことがあった。
「そりゃあ、その方がいいに決まってますよ~。 ましてマレーシアにすでに工場を持ってるだから。」
それに・・私だって仕事がラクになる(笑) 中国産の場合は二度手間になる上、やたらに証明書提示などが要求されることも多いので仕事に倍以上の時間がかかるのだ。(それは、お客様には言えない、ここだけの話だけど・・)
わーい!
私のクライアントさんから、ついにMade In Chinaがなくなるぞ~と喜んだものの・・・ところが、今年も半ばを過ぎたというのにいまだに中国産の貨物が同じようにやってきている。。。
そう簡単にはいかないのだ。
途中で契約を破棄すると中国では莫大な違約金もかかるし、なかなか退去させてもらえない、と聞いている。
日本政府からの中国移転のための補助金ではどうにも賄えないほどの損失が大きい・・とも聞いている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「中国依存で世界は回っている」・・これは以前からも仕事上から痛切に感じていたことだ。
まず、ほとんどといっていいくらいエアラインは中国系が多く使われているのだから。
中国系の飛行機が飛んでるところはどこでも真っ先に中国系を使うのだ。(私はアメリカ在住の日系フォワーダでしか働いたことがないのでひょっとしたら他は違うのかもしれないが・・)
中国系というのは、China Air, China Southern, China Eastern cargo などというエアラインの会社のことだ。

「シンガポールから来るのになんでシンガポール・エアを使わないんだよ!!」
「だって、チャイナ系の方が安いんだもん。 安い方使うに決まってんじゃん!」
現地国エアラインより何よりも、一番安いレートのチャイナエアこそが熱烈歓迎

ところが! 貨物輸送上の問題が多々起こる。 その対応も悪い。 話してる途中で電話が切られることもしばしば。
中には英語すら満足に話せない人だっている・・・。 おいおい!
「こうゆう厄介ごとにかかる交渉や時間のロスなども考慮した上で、チャイナ系に決めたんかよ?
いーーや! 絶対考えてないだろ! ただ安いからだけで決めてるだろ!
その上、それにかかる面倒なことはぜーんぶ社員に押し付けて仕事なんだからなんとかしろ!だし、おまけに経費削減で残業は絶対するな!って、いったいなんなんだよ!! 」
と・・社員は不満たらたらになるというわけだ(笑)
まあ、思い起こせば・・ここ数年来、ずーーと多くの企業が中国進出をして中国工場を建てまくったきたのだから・・必然的に中国産を多く扱うことにもなるし、エアラインだって中国系となるのは当然だろう。
とにかく、中国系のエアラインは安いんだから!
(それはカーゴ便だけかな? それともパッセンジャー便のエアラインだって安いのかな?)
そうやって、なにもかもが中国中国、Made In Chinaだらけになったというわけだ(笑)
いやいや・・Made in Chinaじゃない製品ですら、実質的にはMade in China?と呼べそうなものだってある。(私たちが知らないだけ)
そんな内容を、少し前のブログ記事にアップしたことがあった ➡世界情勢でみる「この世は金次第」か「カネは二の次か」
イタリアの有名デザイナーズブランドについての話だ。
ミラノ周辺の有名なイタリアブランド、GUCCI(グッチ)、FENDI(フェンディ)、VALENTINO(ヴァレンティノ)、PRADA(プラダ)といったものは、Made In Italyでありながら、 実際には、北イタリアの中国人の工場で、中国人が管理し、中国本土から呼び寄せた中国人労働者によって作られてるという話。

これじゃあ、イタリアの香りはもうしないだろう。
気がついてみたら、こうやって世界中が「中国」一色になっていたというわけだ。
それがグローバル化だ。
別の言い方をすれば、国も国境も関係ない! 儲かるとこどこでもいき、なんでもしちゃう!というポリシーであり、 そうやって世界をまたにかけた人々のことだ。
私は日々「関税」を相手にしながら・・そんなことを思う。
「安ければ良し」だけが定着したおかげで、客側、船や飛行機会社、我々フォワーダー、みーんなどこかでイライラしてる。
「コストは1円でも安く儲けは1円でも高く」・・仕方ないさ、ビジネスってそうゆうものさ、と言い聞かせながら。
おーーい、誰かここらでストップかけてくれよ~!
でも回り出しちゃった歯車にストップをかけるのは大変だ。
そんなことをすれば摩擦によって火花が散る!

ああ、これが貿易摩擦なんだ~

・・・・・・・・・・・・・・・
ある人が「中国が戦争をしかけてきたらどうしよう?」と心配していた。
「こんなにも巨大な経済大国となり世界を牛耳ってしまった中国なんだから、いざ戦争となったらアメリカの連合軍だって危ないかもしれない・・・核保有国でもあるわけだし~。 世界大戦にでもなって、しかもアメリカが敗戦国になったら、どうしよう?」と。
いやいや、それはないだろう

もしも、実際に戦争をしかけてきたとしても、最終的には中国に勝ち目はない・・と思う。
なぜなら・・利権主義の国だから。
利権主義の人々が一番大切にするのは、我が身と我財産だ。
中共が怖くて強いと思ってるうちは従順なフリをするけど、危なくなれば、さっさと敵国に情報を売ってでも自分が助かろうとする人たちばかりになるだろう。
少しでも不安や恐怖を感じれば、それで自滅の道をたどるような気がする。
戦争って決して良いことではないけれど・・戦争に勝つには国の大きさや財力だけではないと思っている。
国民(兵士たち)の愛国心、たとえ命掛けでも国の役に立ちたいという思いがあってこそだ。
そうやって一丸となれる国であれば、たとえビンボーな小国であってさえ、恐るべき敵となることだってあるのだ。
(ひょっとして・・昔の日本はそんな国だったのかもしれないねえ。)
今の中国政府にそんなカリスマ的魅力はないと思う。
官僚も軍隊も、見てないとこでは物資の横流しが横行しているというような国では、軍の統率だってとれないだろう(笑)
国民に愛を与えない政府は国民から与えられるわけもない。
み~んな自分のことが一番で、み~んな自分のことしか考えない・・ということになる。
そして、いざとなれば一番弱い存在じゃないかな(笑)