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ウンベルト・エーコの「薔薇の名前」

アメリカで生活していて困ることは、日本の本が気軽に読めないってことだ。

数年前に、ウンベルト・エーコ(河島 英昭訳)の「薔薇の名前」が読みたい!って思ったんだけど・・

電子書籍にもなってないし文庫本すら出ていない、この単行本上下巻で5000円近くする上、さらにアメリカまでの送料を考えたとき・・・
さすがに諦めた! (なにがなんでも読みたい!ってわけでもなかったのかもしれないが・・)


数年経った今、調べてみても状況は同じ。


ちなみに、英語版で調べてみたら、Kindleで$9.99だし、ペーパーバックでも$15くらい。
さらに中古ならば$4程度からある。
ハードカバー(単行本)でも$21程度だ(もちろん上下巻なんてないし、まとまった1冊での値段だ)

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日本はなんだって、こんなにも本が高いんだ?



じゃあ、これも英語版で読めばいいんだけど・・

ハリー・ポッターを読むのとは、わけが違うし。

これは、「推理探偵小説」といっても・・まるでアガサ・クリスティーやエラリー・クインなどとはまったくの別物。


1327年の、北イタリアの修道院を舞台にして、フランシスコ会とベネディクト会、神聖ローマ皇帝とアヴィニョンに移った教皇の争い、異端審問、ヨハネの黙示録に、最終的にはアリストテレスの『詩学』の第二部の謎にいきつくといったような内容なのだ。

ラテン語などの古典からの引用も多いようだし、たぶん、「ダ・ヴィンチコード」よりも、私にははるかに難解そうな気がする。

絶対、日本語じゃなきゃ、サクサク読めないだろうなあ。。。


Umberto Eco

この作者はもともとは、作家ではない。

UMBERTO ECO


ウンベルト・エーコ(Umberto Eco, 1932 - 2016)という人
イタリアの哲学者でボローニャ大学教授。 アレッサンドリア生まれ(北イタリア)

哲学者としては、記号論の分野で世界的に有名。
トマス・アクィナスの美論についての論文で学位を取得。 

ラジオ放送局でドキュメンタリー番組のプロデューサーとして勤務した後、大学へ戻り哲学論文ならびに文学作品の精力的な発表を続けた。



そして、彼は48歳にして突然小説家になった人だ。

そう、映画化で有名になった作品、「薔薇の名前」の原作者。

1980年に出版されたのだけど・・「せいぜい売れても売れても三千部だろう」と言われてたらしい。
それがなんと、世界で五千万部以上を売り上げてしまったという。

そうなりゃ、当然映画化って話になる。
  ↓
1986年に映画が封切られた。

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映画は、ショーン・コネリーとクリスチャン・スレーター・・・懐かしいなあ!


最初、私は記号論、記号学者というのに、興味を惹かれたのだけど・・なんとなく、それは、後の「ダ・ヴィンチコード」のロバート・ラングドン教授にダブって見えたりもする。
(もちろん、ダ・ヴィンチコードの方が、ずっと後の作品)


ランングドン教授は『宗教象徴学』だったけど、それもまた、「記号学」のことなのだから。

中世のキリスト教、記号学、神学的、哲学的、ミステリー

こりゃ、やっぱり・・後のダ・ヴィンチコードにも通ずるところがあるような(笑)

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なぜ、エーコはいきなり、作家デビューしてしまったんだろう?

初版本の惹句には、「理論化できないことは物語らなければならない」と書かれていたそうだけど・・・それが目的だったんだろうか?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

小説(物語)や映画の楽しみは、完全に読者にゆだねられる。

たとえば、この「薔薇の名前」は・・

ホームズチック・ミステリーとして観るもよし、歴史ミステリとして観るもよし、中世キリスト教や当時の政治といった時代色に注目して観てもよし。

ショーン・コネリーの演じたバスカヴィルのウィリアム・・なんて、まさに、シャーロック・ホームズを連想させる名前だし・・(バスカヴィルの犬は代表作だし、ウィリアムといえば英国人の名)

メルクのアドソというのは、アドソのイタリア語は「ワトソン」を意味するんだとか。

事実、エーコは、シャーロキアンでもあったそうだし・・お堅いだけの学者かと思えば、まったく違ったタイプだったらしい。
子どものころからコミックスや物語が大好きだったそうだし、とくにバロック音楽の演奏も得意としていたそうだ。

学生時代は、中世の神学や美学の研究。  
エーコは、スヌーピーを生んだアメリカの漫画家チャールズ・シュルツをも絶賛している。
Umberto Eco Explains the Poetic Power of Charles Schulz’s Peanuts

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おそらく、彼は記号学という観点からすべてを眺めていたようなフシがある(笑)
昔は学問の対象とは見なされていなかった漫画や大衆小説でさえもだ。




私が最初にこの映画を見たときは、もちろん、中世のシャーロッキアンミステリーとして観ていた。


この不気味でオドロオドロした迷宮図書館も圧巻だったし・・・(ちょっとホグワーツ城をも思い出すような・・(笑)
     ↓
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ヨハネの黙示録から「天使が7つのラッパを吹き鳴らすとき・・」に起きる、不気味な連続殺人事件は、まるで、横溝正史の世界かい!ってくらいの不気味さだったし(笑)

こうゆう死体発見とか・・

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こうゆうのとか・・

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ずいぶん楽しませてもらった。


と、同時に、

当時のイタリアのベネディクト派ってのは、こんな暗~い修道院の中で、
「笑うこと」「冗談」「おしゃべり」も禁止されてる世界だったのか~!

異端審問って恐怖政治そのものじゃないか~!


なーんてことをあらためて思ったりもした。


ところが、さらに歴史的背景を調べてから見ると、また違った側面も見えてくる。

白でも黒でもないグレーな人物の中の後半に、

フィリップ4世ローマ教皇クレメンス5世についてやら、テンプル騎士団の総長、ジャック・ド・モレー が火あぶりにされた話なんかを、ちょこっとアップしたけど・・

ああ、こんな状況だったんだ~とよなあ、と歴史的背景が見えてくると、さらに面白くなった。



さらに、このストーリーの骨格をなしてるのは、

アリストテレスの『詩編』第2部の謎

だろう。


アリストテレスは哲学以外にも、生物学や天文学・・なんでもかんでもオールマイティーにできちゃう博識家!

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プラトンの築いた学校の生徒、弟子であり・・

アレクサンドロス大王の家庭教師でもあった人だ。


当時のエリートといえば、アテネ出身のギリシャ人だろうと思ってたのだが・・彼は、マケドニア人だったのだ。

そして一風変わってる人でもあったらしい。



詩編1と2は、「演劇論」ともいわれている。

詩編1は悲劇について、2は喜劇について書かれていただろう・・とも言われている。

この時代には、演劇という概念すら確率してなかった時代・・・ぜひ彼の演劇論を読んでみたいものだけど・・

詩編2は見つかっていない。(故意に隠されて紛失したのか、それとも初めから存在しなかったのか・・謎。



彼が生涯を通じて残した書物は実に550以上もあると言われているものの、多くは紛失してしまってるそうだ。

なんでも・・新たに建設されたアレクサンドリア図書館による押収を避けるために、あっちこっちに分散した結果、行方がわからなくなってしまったとか。

<<参考>>
アレキサンダー大王からヒュパティア、そして現代へ

また、後年再発見されたものの中にも紛失箇所がとても多く、著作の内容においても、彼自身の意図したものではない可能性が高い、という話もある。


何から何まで謎・・・だからこそ、本にも映画にもなるのだろうが・・(笑)


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しかしながら・・・

もしも、詩編2が、この映画のように、この時代に存在していたら・・・

当然のごとく、発禁書になっただろう。

こうやって、迷宮図書館の奥深くに隠された可能性は大アリだろう。



そこで疑問!

でも、なぜ焚書扱いにならなかったんだろう?


見られて困るものなら、さっさと焼き捨てちゃえばいいのだ!
それこそ、文化大革命の中国のように!


しかし、やっぱり・・
彼らには焼き捨てられないのだ!

どんなに発禁されようが、命がけでも・・中身が見たくてたまらないのだから。

アカデミック世界で生きる人々の、書物に対する狂気に近い思いがあるのかもしれない。

異端審問官、ベルナール・ギーのような立場とはまったく違うのだ。


ふと、ここらへんにも、エーコ自身の姿を重ねてみることができるのかもしれない。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ときどき思うのだけど、

小説、物語、もちろん・・映画も、

ただのフィクションとは思えないときがある。

あ、これは真実だ!と、なぜか、確信に近い状態で思ってしまうことが多々ある。
もちろん、そんなことは私の主観でしかないのだけど。



ずーーと前にバード少将の話をアップしたことがあったけど・・(4年前だったらしい)
    ↓
ふと思い出したバード少将の話

この当時、地球空洞説なんて信じる人は少なかっただろう。



そこで、あたかもフィクション・ストーリーであるかのように、本を出版したのが、これだった。
     ↓
1964年にアメリカの哲学者であるレイモンド・バーナードが、『空洞地球 - 史上最大の地埋学的発見』という本を出版。

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それが学術書であろうが、論文であろうが、神話だろうが、物語であろうが・・・

私の中ではほとんど区別がなくって・・それがリアルに感じるかどうか・・いつもそれしかない。

まったくのフィクションでありながらも、
そこには、作者だけが感じとった、真実のシンクロニシティーがあるのかもしれない。

そんなことを感じながら読むと、読書はいつも、ワクワクさせてくれる(笑)


<参考>
ロサンゼルス・タイムズ記事より
Novelist Umberto Eco dies at 84; wrote 'Name of the Rose' and 'Foucault's Pendulum'


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Re: シンクロ!

ニコムさん、こんにちは。

昔映画を観た後、私もさっそく本屋さんへ行って立ち読みしたんだけど、最初の数ページから・・つまずいてしまった。
なーんの知識も無い状態の私には、面白さはわからないんだろうなあって思って断念したもんです(笑)

ウンベルト・エーコ氏も、また最初に翻訳された方もお亡くなりになってるようですね。
以前、ウンベルト・エーコ死去のニュースを見て思い出して、また読みたくなりました。

なんだか、この本・・ほかのミステリーとは違って、「本当のミステリー」って気がするんですよね?
ん~うまく言えないんだけど・・作者が作り出したミステリーじゃなくって、過去の歴史上のことから何から何までミステリーが詰まってるような。

ぜひ、読んでみてください。
よろしかったら、ぜひ感想を聞かせてくださいね。
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