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魯山人のエピソードと密教

ふと、思い出した魯山人のエピソードがあります。
*北大路魯山人・・篆刻家・画家・陶芸家・書道家・漆芸家・料理家など、なんでもアリの人

ずーーと昔、私がまだ日本にいた頃、陶芸教室に通っていた事がありました。



これは、その頃、陶芸の先生から聞いた魯山人の話。

右:魯山人(71歳のとき)、左:パブロ・ピカソ
picaso_ros.jpg
魯山人の本より

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ある日、友人の紹介で人が来た。 客は、わたしをつかまえてさっそく質問を発した。

「先生、料理の根本義についておきかせください」

 そこで、わたしは言下に答えた。

「食うために作ることだ」

 客は物足りぬ顔をしながらまたきいた。

「食うために作ることですか、先生。そんなら、なんのために食うのですか」

「そりゃ生きるためにだ」

「なんのために生きるのですか」

「死ぬためにだ」

「まるで先生、禅問答のようですね」

 わたしは笑いながらいった。
「君がむずかしいことを聞くからだ。料理の根本義について……なんぞいい出すからだよ。もっと、あたりまえの言葉できけばいいではないか。むずかしい言葉を使わぬと、本当のことや、立派なことがきけないと思うているとみえるね」

 客はあわてていった。
「いえ、決して……。では、あたりまえの言葉で伺ったら、先生は本当のことを教えてくださいますか」

「うむ、あたりまえの言葉で聞いたら、あたりまえのことをいってやるよ」

 客は、ここでもまたあわてていった。
「あたりまえのことなら、伺いたくないのです。先生、本当のことをききたいのです」

「あたりまえのことが、一番本当のことだよ。
君は、本当のものを見ないから見まちがうのだ。耳は、本当のことをききたがらない。
舌は本当の味を一つも知らないから、ごまかされるのだ。
手は、あたりまえのことをしないから、庖丁で怪我けがをするのだ」

「分ったようで、分りません」

「そうだ、なかなか、あたりまえのことは分りにくいものだ。いや、分ろうとしないのだよ。ハハハ……。
いろいろききたければ、わたしが、近々本を出すから、それを読んでくれるといい。それには、あたりまえのことしか書いてないが、多分、君の聞きたいことがみんな書いてあると思うよ」

「そうですか、ぜひ、読ませていただきます」

 客は帰りぎわに、なにか書いてくれといった。玄関へかけるのだという。
そこでわたしは、さっそく客のいう通りに、色紙をとりあげ、筆をもった。

「玄関へかけるのですから」

 客は、念を押して頼んだ。

 そこでわたしは「玄関」と書いて渡した。

「先生、玄関と書いてくださったのですか」

「そうだ」

 客は、まだなにかいいたそうであったが、なにもいわずに帰って行った。


 玄関であっても玄関でないような玄関もある。さっきの客も、入り口だか、便所だか、靴脱ぎだか、物置だか分らぬような玄関を作ったのかもしれない。

そうでなかったら、あんなこねまわした質問をするはずがない。

さっきの客も、また、その客を訪ねて行く客も、間違わぬようにと思って、わたしは親切に玄関と書いてあげた。

昭和28年、魯山人の言葉から。


尋常一様より

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

私は、特に魯山人ファンというわけでもないんだけど・・このエピソードは、なぜか好きでしたね~。


言葉か~。

たしかに、始めに言葉ありき ・・・なんだけど、

いつしか言葉の洪水に飲み込まれて、言葉に惑わされてしまって、どんどん神髄から遠くへ行っちゃうことも多いような気がします。

とくに・・知識人と言われる人たち(笑)

この、魯山人さんのウチにやってきた、客人のように。

*知識人・・・学歴あり、知識豊富、多くの言葉を知ってる人たち、また、自分でもそう自覚してる人たち


とくに、インタビュアーというのは、相手にインタビューしてるつもりで、自分自身まで曝け出すことになっちゃうものですね~。
本人は、それすら気がつかないものですが・・。


・・・・・・・・・・・・・・

密教ってご存知でしょうか?

密教とひとことで言っても・・昨今では新興宗教も含めてさまざまな宗派もあるので、誤解があるといけないので・・

ここでは、西安の青龍寺恵果和尚(けいか / えか)の正当な伝承者の伝えたもの・・・ってことで限定しましょう。


ここ、青龍寺
   ↓
seiryu_keika.jpg


ちなみに、そのメンバーは、「伝持の八祖」と呼ばれるそうで・・

龍猛( りゅうみょう)
龍智(りゅうち)
金剛智(こんごうち)
不空(ふくう)
善無畏(ぜんむい)
一行(いちぎょう)
恵果(けいか)
空海(くうかい)



なんだそうです。

そう、日本ではあの空海が祖となっている、真言宗になるわけですね~。


その、密教の方から聞いた「お釈迦様エピソード」がこちらです。 
     ↓

ある時、お釈迦様が弟子の前で花を一輪手に取って、それを眺めていた。

ただ、それだけのこと。

ある弟子は、お釈迦様のそんな様子に気を留めることもしない。

また、ある弟子は、なぜお釈迦様が花に関心を示しているんだろう?と思う。

一人の弟子だけは、それを見て、はっ!とする。・・・そして悟りを得てしまった。



これこそ、以心伝心という、もともとは仏教用語だったそうです。

flower_lotus.jpg

「心をもって心に伝える」という。


この密教の奥義として、

ただ、心から心に伝えることが大切であり、
文章によって伝えることのみを貴いとはしない。




というのがあります。

要するに、真の仏教は、このように書物や文字では伝えられないものがあるんですよ~と。



それ以前の仏教、つまり・・空海が唐の青龍寺で密教を学んでくる以前は、顕教(けんぎょう)と呼ばれていました。

顕教(けんぎょう)というのは、別に宗派のことをいうわけじゃないです。
ただの、分類するだけの呼び方です。

顕教(けんぎょう)・・言葉や文献で説かれた教え

密教・・以心伝心で伝えるもの



という分類です。

以前の仏教は、書物を読んで研究したり、また、偉いお坊さんたちが、せっせと相手にお説法することで説いてきた教えだったのです。


もちろん、それも素晴らしいことだったんでしょうが・・・次第に、そこには落とし穴も生まれてくるわけで・・

たぶん、多くを学んだ人々の中には、「頭でっかち」になっちゃった人も増えてきたんでしょうね~。


そこで、それまでの時流を反省するかのように、


顕教は極論すれば書物でも学べる教えであるが、書物のみで学べるものの中には本当の真理はない、という立場をとったのが密教でした。


これ、現代風にもっと簡単に言っちゃえば・・

本で勉強したり講義を聞いたりしても、わからん人には、わからんよ~。
感性も使ってキャッチしろよ~。


ってことかもしれません(笑)


ところで・・感性って言葉も曖昧ですけどね~。
直感、直観、霊感、第六感、なんでもいいんですけど・・感官を媒介として受入れる精神の認識能力なんて説明がありました。


Heart Communication


なるほど・・・。

「一生懸命努力してきた、知識人と呼ばれる人こそ、どんどん神髄から遠くへ行っちゃう」のも、わかる気がします。

別にこういったことは、宗教やら精神世界のことだけじゃないと思います。

科学、数学、あらゆる分野でも、また、日常の中でも、言えることだろうな~と思います。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それでもやっぱり・・・とくに精神世界のことは言葉だけで伝えることは難しいでしょうね。


言葉だけが独り歩きして、誤解されたり、曲解されたり・・

あらゆる宗教でも、そういった側面はありますね。


密教は、神秘主義的、象徴主義的な教義が中心で信者だけで非公開な教団内で修行を行なうもの、それ以外、仏教を体得できない。 だから、出家しなさい・・・とか(笑)・・(実際に、これは・・オウム真理教で言われたことだったとか・・)



始めに言葉ありき・・・

Music-For-Father-Sun.jpg

それは・・言葉から音質を感じ取ることとと似てるかもしれません。

音質が無い言葉には、言霊も宿らないでしょうから。

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